2006年に開催した武井豊子の仕事「万葉展」です。


御礼

ありがとう、繭たち。

先日の「万葉展」に際しまして、ご多忙中にも拘わりませずお越しいただき、また沢山のお心遣いやお言葉を頂戴し心から御礼申し上げます。
これからも精進を重ね、幾時代を経ても愛される信州・松本紬、着物と帯の一品織りを織り続ける覚悟です。
今後とも皆様のご指導の程、宜しくお願い申し上げます。
遅れましたが、皆様のご多幸をお祈り申し上げ、 お礼の書状にかえさせていただきます。

平成十八年五月吉日 武井豊子

 長野県松本市は草木染材が豊富で、温かく和らぎのある色を引き出すことができます。以前「授業で草木染めを教えたい」という中学校の先生が訪ねて来られ、その時、この自然に恵まれた環境の中で、化学染めではなく草木の染料を使いながら 先人たちが育んできた伝統文化や技術を子供たちに伝え残すことは、とても大切な事なのではないかと教えられました。

 新聞紙上やテレビでも、草木染め教室が開催されたという、各地域での世代を越えた取り組み等がたくさん報道されており、それだけ人々は草木染めに興味を持ち、もっと知りたいと考えている人がたくさんいるということを知り嬉しくなりました。この個展によって、学校の授業や、地域の公民館活動等で行われた「草木染め」に興味を持ってくれた人たちに、 もう一歩踏み込んだ先にある、草木染めで織られた美しい松本の伝統技術である松本紬(信州紬)と着物文化を伝え、地域文化に少しでも貢献したいと思います。



 今回の展示では自然や共鳴する様々な心をテーマに新作を含めた訪問着、着尺、八寸帯、半巾帯、その他の和装小物等をご覧頂くことができます。近年ではパーティやお茶会等でも従来の染めの着物に引けをとらない紬を見かけることが増えました。着崩れせず丈夫で奥深い光沢がある紬は、一昔前まで普段着とされていたものからよりフォーマルな用途へと広がってきました。特に松本紬(信州紬)のデザインの独創性は着物通の方々にとても人気のようです。

 私の物作りは伝統の技法を守りながらも常に現代の人々に好まれる研究をし続けて、はや三十年が過ぎました。そして今、益々紬が面白くなってきています。昨年は三十周年と内閣総理大臣賞受賞記念として東京で個展を開催しましたが、松本でも開催できないものかと各方面の方々よりご意見を頂戴し、今回の開催に至りました。会場では作品のみではなく、染料となる草木やそれによって染められた絹糸、繭(珍しい緑色をした山繭も)も展示し、僅かですが織物制作過程の映像も流します。

 国の指定技法とされた手くくりの絣技法、草木染、手投げ杼の手織技法を、この機会に長野県の皆様にお楽しみいただけたらと思います。